あ
アリョンカ / Алёнкаロシア製のチョコレートの商品名。メーカーはクラースヌイ・オクチャーブリ社。
パッケージに描かれた、プラトーク(ショール)を巻いた少女のイラストが特徴的。
ソ連時代の1965年から製造されており、現在でも広く流通している。
なお、「アリョンカ」は女性名「アリョーナ(Алёна)」の愛称でもある。
イリヤ・ムーロメツ / Илья Муромец
ロシアの口承叙事詩、ブィリーナの登場人物。
手足の不自由な子供だったが、ある日訪れた異教の司祭によって動くことができるようになり、
「正義のため、国の民を守るために使う」という約束で強大な力を授かった。
旅の途中で出会い義兄弟となった、怪力の巨人スヴャトゴールと共にキエフの都へ向かい、
多くの偉業を成し遂げ、悪党や怪物を退治し、侵略してきたタタールの王をも追い払ったが、
最後には慢心から身を滅ぼし、後悔の祈りとともに石像と化したという。
ヴァレーニエ / Варенье
主に果物、時には草花やナッツ、野菜などを砂糖で煮て作る保存食。
ジャムと訳されることもあるが、日本で一般的なジャムとは違い果実の形を残す。
よく「ロシアでは紅茶にジャムを入れて飲む」(いわゆる「ロシアンティー」)と誤解されるが、
このヴァレーニエをお茶請けとして食べながら紅茶を飲むというのが実際に近い。
なお、果実が原型を留めていないもの(日本でいう「ジャム」)は「ジェム(джем)」、
果物を煮た後で、さらに甘味料を追加するものは「パヴィードラ(повидло)」と呼ばれ、
三者の中ではヴァレーニエが最も上等なものという位置づけのようである。
ヴォジャノーイ / Водяной
スラヴの伝承に語られる水の精。池や湖、川、海など、あらゆる水場を司る。
基本的には一つの水場に一人のヴォジャノーイがいるとされており、
そこに住む魚や水鳥などの動物の保護者、監視者のような存在でもある。
人間たちが礼儀をわきまえ、捧げ物をすれば進んで害をなすことはないが、
怒らせれば漁師の網をめちゃくちゃにしたり、人を溺れさせたりする。
ウチェニイク / Ученик
世界魔術師協会のロシア各支部で用いられる階級の一つ。入門生。
公式な階級名(英語)でいうイニシエイトに当たり、序列としては最下位である。
いわゆる「魔法使いの弟子」であり、公共の場所での魔術の行使や杖の携帯、
魔法を用いての開業などは許可されていない。
ウハー / Уха
伝統的なロシア料理の一つで、白身魚を使ったすまし汁のこと。
使われる魚にはサケ、カワカマス、カジキ、チョウザメ等がある。
魚のほかにはジャガイモやニンジン等の野菜を入れることが多いが、
魚以外は一切入れずに作るとても潔いバージョンもあるようだ。
ウピル / Упырь
吸血鬼の一種。ウプイリとも。人間の顔を持つ巨大なコウモリの姿をしている。
完全な人間に化けることもでき、その場合はたいてい美男美女である。
翼には鋭い爪を持っている、舌の先に針が生えていてそれで血を吸う等のバリエーションあり。
滅ぼすためにはお馴染み「心臓にサンザシの杭を打ち込む」が有効である。
オクチャブリャータ / Октябрята
ソ連時代のロシアに存在した少年団。「10月革命の子供たち」ほどの意味。
10歳から加入可能なピオネール(ソ連版のボーイスカウト)の候補生として、
7歳から9歳までの少年少女のうち、健康で成績優秀、品行方正、
かつ優れた家柄の(つまりプロレタリアートの)家に生まれた者が選ばれた。
か
クレビャーカ / Кулебякаパイ生地ないしブリオッシュ生地を用い、具を包んで焼いたペイストリーの一種。
具には魚、キノコ、米や蕎麦の実、ゆで卵など様々なバリエーションがある。
たいていは大型に作られ、切り分けて複数人に振る舞われる。
断面が美しくなるよう包み方を工夫したり、表面にも装飾を施すことも多い。
コムソモール / Комсомол
マルクス・レーニン主義党の青年組織。共産主義青年同盟。
現代ロシアでもロシア共産党の指導下、ロシア連邦共産主義青年同盟として存続している。
コムナルカ / Коммуналка
ソ連時代に建てられた公共住宅の総称。現代でいうシェアハウスに近い。
トイレや風呂(無い場合もあった)、台所等を複数家族で共有していた。
台所に貯蓄してある食料、共用部に置いた私物等をめぐる喧嘩が絶えなかったり、
各家庭の事情が筒抜けになってしまったりと、住環境は窮屈かつ劣悪だった。
さ
サーラ / Сало豚の脂身を塩漬けにした保存食。伝統的なウクライナ料理の一つ。
ウクライナ語でサーロ、ほかサラニーナ等と呼ばれることもある。
言わば燻製する前のベーコンであり、薄切りにしてそのまま食べたり、
パンの上に載せてカナッペにしたりする。もちろん燻すこともある。
サマゴン / Самогон
大量生産された工業製品ではなく、個人が自宅で作った蒸留酒のこと。
「自分で(Сам)」「蒸留する(Гнать)」に由来している。
ソ連時代の厳格な減酒法、あるいは単に物不足により酒の入手が困難だった際、
いわゆる密造酒として流行したが、現在では販売しなければ違法ではない。
市販のウォッカより安全で味もいいとして、サマゴン作りは未だに盛んである。
サンクトペテルブルク / Санкт-Петербург
バルト海に面したロシア西部の港湾都市。地元っ子からの愛称は「ピーチェル」。
1703年5月27日に建立され、1917年までロシア帝国の首都だった。
このため、後に首都となったモスクワとの間に対抗意識を持つ住民も多いらしい。
第1次世界大戦中は「ペトログラード」、ソ連時代は「レニングラード」と改名されていた。
《シーとカーシャがぼくらの糧》 / Щи да каша - пища наша
伝統的なロシア語の言い回し。「каша」と「наша」で韻を踏んでいる。
シーはキャベツの入ったスープ、カーシャは蕎麦の実で作った粥のこと。
どちらも素朴な料理だが、日々の生活に深く根付いた重要なものである。
シュヴァロフスキー公園 / Шуваловский парк
サンクトペテルブルク北部、ヴィヴォルグスキー地区にある公園。
面積は142ヘクタール。園内には針葉樹が多くあるほか、大小の池や小川も存在する。
生神女マリヤ / Богородица Мария
正教会におけるイエスの母マリアに対する敬称。西方教会でいう聖母マリアのこと。
ほかにも「永貞童女」「女宰」「女王」等の称号で呼ばれる。
ストリボーグ / Стрибог
スラヴ神話の風神。風そのものというよりは、大気や天候の全てを司る神格。
聖域の一つがウクライナの首都キエフの丘にあり、木の神像が祀られていたという。
他のスラヴ神話の神々と同様、その詳細については解らないことも多い
(キリスト教化以前のスラヴ民族は記録するための文字を持っていなかった)。
政治委員(せいじいいん、ポリトルーク) / Политрук
ソビエト共産党から国内の組織・団体監視のため派遣された指導員のこと。
軍隊に配置されるものを指して政治士官、政治将校とも。
組織内部でのプロパガンダ、および忠誠心の保持を主な目的としている。
セミーク / Семик
復活大祭から数えて7回目の木曜日に祝われる、伝統的なロシアの春祭り。
元はスラヴの信仰に基づき、豊穣を祈願するための儀式だったが、
キリスト教の流入によって教会暦と結び付けられるようになった。
水の精ルサールカと深く関連し、この日には若い娘たちが白樺を編んで輪を作るなど、
精霊が持つ豊穣の力を授かるために様々な儀式が行われた。
た
ダーチャ / Дачаロシアおよび旧ソ連圏で一般的なセカンドハウス。起源としては11世紀にまで遡る。
たいていは都市の郊外に建てられ、週末や長期の休暇を過ごすという家族が多い。
かつては食糧不足を自給自足で補うためのもので、現在も菜園を営んだり家畜を飼ったり、
ガーデニングを楽しんだりする場として愛されている。
大斎(たいさい) / Великий пост
ロシア正教を含む東方正教会において、復活大祭を準備する期間のこと。
イエス・キリストが荒野で断食を行った40日間にちなみ、
復活大祭までの40日間、特定の食べ物を禁じるなどの節制が行われる。
卵、乳製品、肉、魚、オリーブ油、ワイン等、慎むべきとされる食品は多いが、
現代では全ての信徒がここまで厳格に守っているわけではない。
チャロデーイ / Чародей
世界魔術師協会のロシア各支部で用いられる階級の一つ。魔術師。
公式な階級名(英語)でいうソーサラーに当たり、序列としては下から2番目。
魔術を用いての開業、規定範囲内に収まる杖の携帯等が認められるほか、
弟子を取り魔術教育に携わるための免許を取ることもできるようになる。
チョルト/ Чёрт
ロシアの伝承・民話などに幅広く登場する悪魔。
キリスト教の悪魔(ヂャーヴォル)とは別物だが、同一視されることが多い。
人間に対しては些細な悪戯で済ませる場合もあれば、言葉巧みに人を惑わし、
悪の道に引き込んだり、破滅させて魂を奪ったりすることも。
トルストイの民話「イワンのばか」に登場する悪魔もこのチョルトである。
ドモヴォーイ / Домовой
スラヴ人の家を守る精霊。暖炉の下や地下室、玄関などに住んでいるとされる。
白髪と髭を生やした老人、あるいは小人の姿をしていることが多い。
知らない間に家事を手伝ってくれたり、家族に危険が迫ると教えてくれるなど、
基本的には人間に対して友好的な精霊である。
な
ネヴァ川 / Неваサンクトペテルブルク市内を流れる川。川幅は平均して約400から600m。
冬には凍結し、帝政時代にはその上を路面ならぬ「氷面」電車が通っていた。
有名なワシリエフスキー島への跳ね橋のほか、市内だけでも600近くの橋が掛かっており、
街が「水の都」「北のヴェネチア」と呼ばれる由縁の一つとなっている。
ネフスキー大通り / Невский проспект
サンクトペテルブルクの目抜き通り。沿道には都市を代表する建造物が立ち並ぶ。
繁華街として生活の中心となっているほか、高級な商店や歴史的・宗教的施設が多いため、
昼夜を問わず観光客が訪れ、常に混雑している。
は
バーンニク / Банникスラヴ人の家の風呂に住み着く精霊。蒸し風呂(バーニャ)の床下等に住むとされる。
家人たちが入浴した後の(汚れた)湯を使うのを好んでいるため、
人々は最後に風呂から出るとき、湯を浴槽に残しておかなければならないと言われている。
進んで人間に害をなすことはないが、入浴を覗かれると怒り、熱湯を浴びせたりする。
パルードニツァ / Полудница
一日のうち真昼の時間帯を司る精霊。女性だが年齢や容姿にはばらつきがある。
気温の高い時期にしか現れず、休むべき正午に働いている者をこらしめる。
頭痛を起こしたり、気を失わせたり、最悪の場合には殺してしまったりするが、
基本的には労働者を守ってくれる存在である。おそらくは日射病の擬人化。
ピローグ / Пирог
ロシアを初めとした東スラヴの諸国で食べられるパイの総称。
イースト発酵させた生地で、様々な具を包んで焼いたものが一般的である。
果物やジャム(ヴァレーニエ)、ハチミツ、カッテージチーズなどを包んだ甘いものもあれば、
ひき肉やゆで卵、キノコ、キャベツ、米や蕎麦の実などを詰めた惣菜タイプもある。
ピロシキやピエロギとは似ているが別物。
父称(ふしょう) / Отчество
スラヴの人名によく見られる要素。父親の名前を変形したもの。ロシアでは姓名の間に置かれる。
男性の場合は〜ヴィチ、女性の場合は〜ヴナという形になることがほとんどだが、
父の名前によっては〜イチ、〜ニチナと変化する場合もある。
「マクシム・アンドレエヴィチ・エジョフ」なら父親の名はアンドレイ、
「アリサ・ルキーニチナ・マイスカヤ」なら父親の名はルカである。
様々な事情から実の父親が解らない場合、母方の祖父や養父の名を取ることが多い。
復活大祭(ふっかつたいさい、パスハ) / Пасха
正教会の祝日の一つ。イイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の復活を記憶する祭り。
西方教会でいうイースターに相当し、年によって日付の変わる移動祝日である。
赤く着色した卵を配ったり、特別なパンや菓子などを食べて祝うほか、
信徒たちの間では「ハリストス復活!」「実に復活!」と挨拶を交わす風習がある。
プリャーニク / Пряник
ロシアの伝統的な糖蜜菓子。小麦粉にバターと蜂蜜、卵、重曹等を加えた生地で作る。
具として果物のジャムや煮詰めた練乳などを入れ、表面には型押しで模様を入れたり、
表面に粉砂糖をまぶしたりして装飾を施したものがよく見られる。
ロシア西部の都市トゥーラでは、サモワールと並ぶ名産品として知られているほか、
「飴と鞭」に相当する「プリャーニクと鞭」という言い回しも存在する。
フルシチョフカ / Хрущёвка
1950年代後半、ソビエト連邦の第4代最高指導者ニキータ・フルシチョフの時代に建てられた、
主に五階建て・エレベーターなし、各世帯に固有の風呂・トイレがあるアパートを指す言葉。
コムナルカのように複数世帯で台所やトイレを共有する必要ことなかったものの、
部屋は狭苦しく防音性も乏しい、お世辞にも快適とは言えない居住空間だった。
現代では老朽化や景観の問題から、高層マンションへの建て替え計画が進められているが、
古くからの住民による反発や抗議運動もあり、政治問題と化しつつある。
ペルーン / Перун
スラヴ神話における最高神であり雷神。稲妻を武器とし、敵対する者に炎の矢を降らせる。
古来スラヴ人たちの間では、落雷によって起きた炎は神聖な「天の火」であるとされた。
春には雷雨とともに雪解けをもたらす、豊穣の神としての一面もある。
ほか、槌や斧、ナラの木、アヤメの花などが、ペルーンの象徴として用いられる。
ま
や
ヤンデックス / Яндексロシアの検索エンジン、ならびにポータルサイト。また、それを運営するメディア企業。
当然ながらロシア語での検索に優れ、国内では最も人気のある検索サイトとなっている。
最近は電子マネーやタクシー配車サービス等にも進出している模様。
ら
ラーダ / ЛАДАロシアの自動車メーカー、アフトヴァース(АвтоВАЗ)が製造・販売するブランド。
価格が安く整備性も良いので、現在でも主に旧ソ連構成国で多く流通している。
マクシムたち「スペードの女王」が所有しているのはSUVタイプのラーダ・ニーヴァ。
ルサールカ / Русалка
スラヴ神話に登場する精霊の一つ。若い娘の姿をした水の精。
洗礼を受けなかった、恋人に捨てられた、入水自殺した等の「呪われた」女性の魂とされる。
若い男を歌や踊りで誘惑して水に引きずり込む、恐ろしい死霊としての逸話も残るが、
春には陸に上がって畑に作物を茂らせたり、恵みの雨を齎したりする一面もある。
レーシィ / Леший
スラヴの伝承で、森を司るとされる自然の精。
森の木々やキノコ、そこに住む動物たちなどをひっくるめた「森の守護者」であり、
必要以上に獣を獲ろうとする狩人や、木を伐りすぎる樵などには罰を与えるほか、
不用意に踏み込んだ人間を道に迷わせる、子供をさらうなどの悪戯もする。
一方、礼儀正しく頼みさえすれば、狩人に望みの獲物を与えてくれることもある。
水の守護者ヴォジャノーイとは敵対関係にあり、しばしば激しく争っている。