「はじめに」より

 ケイリー・オウル(Cary Owl) / 「わたし」
 語り手。セントエラスムス市内の公立中学校に通う15歳。
 身長を含め全体的に発達が早く、初対面で中学生と思ってもらえることはまずない。
 中学一年生のときに「先生」の弟子となり、師匠命令のもとにこき使われている。
 弟子入り以来、料理をはじめとする家事の腕は格段に上達したが、
 使えるようになった呪文はせいぜい「灯り」や「発火」程度で、まだ自分の杖も持たない。
 髪は直毛の長いダークブラウン、目はダークブルー

 「先生」(Doctor)
 ケイリーが弟子入りした魔術師。ラナンキュラス通り40番地に自宅を構える。
 本名、年齢、性別、出身その他経歴は一切不詳で、人付き合いもそう多くはない。
 ベテラン魔術師でありながら、現代の科学技術や最新の流行を進んで取り入れ、
 結果として一部の古典派魔術師たちからは目の敵にされている。
 性格は怠惰でわがまま、かつ自分の才能と美貌に根拠の無い自信を持つナルシスト。
 一応「薬局」を開業してはいるが、週休六日の上に開店日は気まぐれで変わる。
 髪は癖のある赤毛(本人は「バーガンディー」と言い張っている)、目はヘーゼル

 ステファン・スターンテイラー(Stephan Sterntaler)
 「先生」の悪友。魔術師協会のマスター号を取得した、筋金入りの大魔術師。
 古くから続く魔術の伝統を重んじ、古典的な手法に強いこだわりを持っている。
 真夏でも常に黒いローブと臙脂のスカーフを身に着け、黒グルミの杖を持ち歩く。
 すっかり現代の文化にかぶれてしまった「先生」とはしばしば対立するが、
 数日もすれば無かったことになり、そしてまた同じ論争を繰り返す間柄。
 ドイツ系で、本人は「神聖ローマ帝国出身」を主張している。真偽は不明。
 髪はダークブロンド、目はブラウン

「魔法使いの弟子」より

 ルミッキ・ヴェルホ(Lumikki Velho)
 ステファンの弟子。ほどよく「今時の若者」なフィンランド人の女性。
 才能と向上心そして人格と容姿まで兼ね備えた、ある意味魔法使い向きでない存在。
 師のステファンからは溺愛されており、跡継ぎとしての未来を嘱望されている。
 しかし新しく恋人を作った挙句、その相手の職業がハッカーだったものだから一大事。
 本人たちには結婚する前提どころか恋人同士である自覚すらないようだが、
 マスターをからかうのが面白いのか、わりと公然といちゃついている。
 髪は亜麻色、目はダークグリーンの猫めいたつリ目。

 ヴァレンティーノ・ビアンコ(Valentino Bianco)
 「わたし」ことケイリーと同じ数学のクラスに属する男子生徒。15歳。
 男子の友達は多いが女子からは嫌われており、ケイリーも例外ではない。
 半年ほど前から魔術師見習いとなり、既にいくつもの呪文を会得している様子。
 師のガブリエルには強く反抗しているが、いつも手酷くやり込められている。
 最近「汚い言葉を使おうとするとお菓子の名前に置き変わる呪い」を掛けられた。
 髪の色、瞳の色ともにダークブラウン。目が大きく、実年齢より幼い顔立ち。

 ガブリエル・R・ウィペット(Gabriel R Whippet)
 ヴァレンティーノの師であり、「先生」とステファンにとっては古くからの天敵。
 誂え仕立てのスーツとステッキ(魔法の杖ではない)を持ち歩く老紳士。
 英領だったころのセントエラスムスに生まれ育ち、現在は医者として活動する。
 魔術師協会からの信頼も篤く、近年はイギリス本国で長く働いていたが、
 久し振りにラナンキュラス通りへ戻り、新たな弟子の教育に力を入れ始めた。
 ステファンほどではないが、伝統的な手法を大切にするタイプの魔術師である。
 髪はシルバー、目はブルー

「ラナンキュラス通りの歩きかた」より

 マリンカ・ヴァレーニエ(Malinka Varenye)
 キャンディショップ「ルサールカ」の店主。数十年前に故郷ロシアからこの国へ亡命、
 戦後になって菓子屋を開業し、現代に至るまで地元の人々に親しまれている。
 特殊な調理器具や材料を使ってかける「お菓子の魔法」を得意としており、
 この魔法が掛けられた多種多様のスイーツが店の看板商品となっている。
 一番のお勧めはラズベリーとブルーベリーを使ったロシア風のミックスジャム。
 髪は栗色、目はチャコールグレー

 キイス・ジョナサン(Keith Jonathan)
 ルミッキの恋人、もといボーイフレンドであるフリーランスのハッカー。28歳。
 ロシア系のアメリカ人(出身はイリノイ州)で、現在はセントエラスムス市内に住む。
 愛想は良くはなく、ダウナーな印象を与えがちだが、人付き合いはそこそこ良い。
 数年前にこの国へ移住、地元のビアフェスティバルでルミッキと知り合った。
 本人は彼女のことを「親友」であり「相棒」で、それ以上でも以下でもないと思っている。
 髪はアッシュブラウン、目はブラウンにほど近いグリーン。垂れ目がち。

 メルラ・リブレット(Merla Libretto)
 あらゆる書物を用いて魔法を行使する技術、「ビブリオマンシー」の数少ない継承者。
 セントエラスムス市内の自邸地下に、魔道書を含む様々な稀覯本の書庫を持つ。
 ビブリオマンシーのほかには「水」の属性、特に冷気を操る術を得意としており、
 その才能を生かして「マダム・メルラの氷結物産店」という冷凍食品専門店を開業。
 料理が下手だったり物臭だったりする魔術師たちに好評を博している。
 髪の色、瞳の色ともにブラック。読書中は鼈甲縁の眼鏡を使用する。

 ルートヴィヒ・シュライバー(Ludwig Schreiber)
 9番地に店舗を構える老舗の筆記用具店、「マイヤー&シュライバー」の店主。
 ドイツ出身で、第二次大戦後にラナンキュラス通りに移り住み商売を始めた。
 小売だけでなく自ら筆記具の製作も行い、修理なども手広く請け負っている。
 少女の幽霊と共に暮らしていると主張し、彼女を「フロイライン」と呼んで可愛がっているが、
 その存在を確認できた者は一人もおらず、想像上の幽霊である可能性がある。
 髪はレンガ色、目はライトブルー

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